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放蕩記

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ベネッセハウス・旅行記

ベネッセハウス・ミュージアム棟

島と豊島に行った。直島は3回目、豊島は初めての訪問だ。過去2回と同様に、ベネッセハウス・ミュージアム棟に宿泊した。行くたびに新たな感動があり飽きない場所だ。旅から帰って来たら、NHK「おはよう日本」で直島が取り上げられていた。海外の旅行本で「死ぬまでに行きたい10の観光地」としてパリやドバイなどと並んで直島が紹介されていたとのこと。京都でも東京でもなく「日本と言えば直島!」これが海外の常識なのだ。直島を訪れる観光客の何と20%が外国人(驚くべき割合)。でも美術好きの若者を除けば、日本人にはあまり知られていない。

 知られていないからこそ良いという面もある。直島を訪れる観光客がここ10年で10倍になり、年間4万人から40万人に増えたと言っても、しょせん年間40万。観光客でごったがえすということはない。もしそんなことになってしまったら興ざめだ。ぽつりぽつりとしか人の居ない場所で、輝くばかりの瀬戸内の風景を背景に、世界的な美術作品を鑑賞するという贅沢こそ、直島の醍醐味だからだ。大きなリゾートホテルもない。ないから良い。あるのは民宿と、そして我らがベネッセハウスだけだ。

 ベネッセハウスは言うまでもなくベネッセが造ったホテルだ。ホテルだけではない。直島最大の目玉である地中美術館も、古民家群を再生して現代アートにしてしまった「家プロジェクト」も、そしてお隣の豊島などの美術館群もすべてベネッセの福武財団がお金を出している。巨大な資本でもって、世界的な美術品を所蔵展示し、今なお新しい作品を提供し続け、世界的な現代美術のメッカにしてしまった福武財団は、さしずめ現代のメディチ家だ。お金の使い方が素晴らしい。この福武財団の威光で、商売目当てのちゃちなホテル資本が入って来れないのならそれは歓迎すべき事なのだ。

 私が直島に行くまでのアクセスは、まずは新幹線で岡山、岡山からJRの茶屋町乗り換えで宇野駅まで30-40分ほど、宇野港からフェリーで20分(たった280円)というもの。手間がかかるが、特にフェリーには風情がある。天気が良ければ瀬戸内の海は絶景だ。

宇野駅からフェリー乗り場までは徒歩5分。
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広々とした船内。岡山駅で「ままかり弁当」など買っておいて食べるのも良し。
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デッキの様子。誰もが海にカメラを向けたがる。
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輝く瀬戸内海。
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 直島の宮浦港にはベネッセの巡回バスが待機している。今回の部屋はミュージアム棟の普通のカテゴリーの部屋、ミュージアムツイン¥40,000。前回宿泊したデラックスツインとの差は、お風呂。ツインは普通のホテルのようなバスルームで、風呂から海が見えない。しかし宿泊メインじゃないのでこれで十分。部屋も広いし、ベランダからの景色もいい。

ミュージアム棟入り口へのアプローチ。「帰って来た」感が。
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2階のカフェからの眺め。
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今回の部屋にはイミ・クネーベルの「グレース・ケリー」という作品が飾られている。壁はもちろん安藤コンクリート。
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ベランダからの絶景。
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 出かけるにあたり、巡回バスの時間が合わないためフロントに相談すると、車で送ってくれるという。このあたりがさすがだ。ちなみにチェックインも、リクエストなしでアーリーチェックインにしてくれた。出かけた先は「Andou Museum」、安藤忠雄の足跡を辿る古民家を改造した美術館だ。この日はたまたま安藤忠雄本人が来館してのギャラリートークがあった。その後は、おなじみ家プロジェクトの一つ「南寺」でのジェームズ・タレルによる暗闇の驚愕体験をしたり、地中美術館に移動し、そのサイズの作品は世界に8作しかないと言われる、6x2mのモネの睡蓮を堪能したりした。さらにこの日は地中美術館でのジェームズ・タレルによる「ナイトプログラム」を予約してあったので、日没頃からの40分は、他の30人程のギャラリーとともに、温熱線の入った石の壁に背中をもたれかけ、屋根が無い四角く切り取られた夜空が、巧妙な仕掛けによって様々な色に変化していくのをひたすら眺めていた。こういった非日常感が直島の醍醐味だ。

普通の民家に見えるが、安藤美術館の前の人だかり。
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安藤忠雄さん本人が来館してのギャラリートーク(無料。入館料は500円)。
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中庭(建物内は撮影禁止)。
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地中美術館への道沿いにあるモネの庭を模した庭(地中美術館内は撮影禁止)。
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 夜はベネッセハウスのメインレストランの一つフレンチの「テラスレストラン」へ。ナイトプログラムの参加を考慮して午後8時からのディナーを予約してある(その連携はベネッセハウスの関知するところ)。コースは10,000円と7,500円があり後者にした。シャンパンと赤ワインをグラスで。店は開放的で明るい雰囲気。洗練されたというよりはフランクな感じ。かなりの収容人数があり、会話で賑やかだが、空間が広いので隣の声は聞き取れないし、自分たちの会話は普通にできるいい音響レベルである。よく見ると、ここでも壁は安藤コンクリート。この島はどこまでも安藤なのが素敵だ。

 アミューズが2品。おつまみ程度でも品数が増えるのは嬉しい。刺身系の前菜とスープ。前日に他店でがっつりと肉だったのでメインは魚に。日本の魚は美味しいので、魚料理はまちがいない。デザートも写真の通り2品あり、楽しめる。この店でいつも残念なのは、窓の外を向いた座席なのに、夜なので、外が真っ暗で何も見えないということだ。せめてイルミネーションでもすればよいのに。

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夜のミュージアムは宿泊者の独占。
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部屋に帰るとサービスの夜食が届いている。
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 翌日は豊島(Tejima)に行くため、船の時間に合わせて朝早くにチェックアウト。ベネッセハウスの巡回バスで宮浦港へ。豊島までは高速船で20分。豊島は、直島に習えとばかりに、福武財団のサポートで芸術の島へと変貌している。2010年の内藤礼による豊島美術館に続き、2013年には横尾忠則の豊島横尾館も誕生した。

直島から豊島へ高速船で。ちなみに帰りは豊島から宇野港までの船に乗った。
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 山道の勾配が強いので、豊島を回るためには電動自転車を借りるのがよい。しかしもっと良いのは、ここでしか乗ることのできない実験カーをレンタルすることだ。NISSANの2人乗りの小型電気自動車「マイクロEV」で公道を走ることが豊島では特別に許可されている。一種の公道実験のようなものだ。レンタル料は1日8,400円。4-5台しかないので事前にインターネットで予約しクレジットカードで決済しておく必要がある。豊島のフェリー乗り場にNISSANレンタカーがありここで簡単な講習がある。もちろん公道を走る歴とした車なので運転免許証が必要である。見た目は小さいがカートではないので坂道でも減速せずにぐいぐい走る。これは一つのアトラクションである。

NISSANのマイクロEV。
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ドアは上に開く。ガルウィングみたいでかっこいい。
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後ろ姿。
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運転席。フロントガラスにはワイパーも付いているが、両サイドに窓ガラスはない。雨の日は降り込むだろう。
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後部座席は運転席のシートを足で挟むようにして座る。前と後ろに一人ずつの二人乗り。バイクのようなものだ。
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このようにして充電する。Ubidenというこの充電課金システムはソフトバンクのものだ。
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 2013年に開館した豊島横尾館は家浦港の近くにある。黒壁と赤いガラス。煙突のような塔が目印だ。建築は永山祐子。入り口から見えるのは赤いガラスを通した庭の風景。庭に出てみるとガラス越しでは分からなかった異様な色の庭石が目を引く。この庭から流れる川には本物の鯉が泳ぎ、屋内のガラスの床の下を流れる。展示されている横尾忠則の絵画のテーマは「死」であろう。塔の内部には無数の滝のカードが貼り付けられ、鏡の床に映ることで滝の音まで聞こえてきそうである。

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 島内には瀬戸内国際芸術祭2013の名残とも言える作品がまだ点在しているが、時間の都合で豊島美術館を目指す。ここが豊島観光の目玉である。棚田の広がる景色に埋もれるように白いシェル型の美術館がひっそりと在る。これは有史上最も高さの低いシェル構造の建物である。建築は西沢立衛、現代の鹿島建設の技術を尽くして作られたものだという。この美術館に展示されているものは何であろう。種明かしになるので詳しくは書かない。しかしそこに展示されているものは、確かに内藤礼らしいものかもしれない。「つねにわたしたちのそばにあり、そこからあらゆるものが生まれ、育まれる。地上の生を見つめているなにかを、ひとつの器として、空間を通して、感じるように」と内藤礼は語っている、そのようなものだ。そしてその美術館は、綿密に計算されたテクノロジーによって、自然の中に自然に生まれたように存在している。この美術館には久々に驚嘆させられた。これを鑑賞するためだけに豊島を訪れる価値があるだろう。一つ注意すべき事がある。柱が一本もない広大なシェルの中では、ひそひそ声も増幅され遠くの人の耳に伝達されてしまうので是非お静かに。

右手の建物が美術館本体。左はカフェ・ミュージアムショップ。
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小山をぐるりとまわる遊歩道の先に美術館の入り口がある。振り返ると開墾された棚田の風景が広がる。
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ここで専用のスリッパに履き替えて入場する。
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Category - ベネッセハウス・直島

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