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放蕩記

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ロルカの詩 II / リャド

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アキン・トレンツ・リャド。最後の印象派、ベラスケスの再来と讃えられ人気絶頂の時、47才の若さで急逝したスペインの天才画家。彼の名を知る人は本邦には少なくない。日本人に彼を知らしめたのはガレリア・プロバの社長、鈴木氏。かのジュディ・オングの元夫である。1990年、プロバの計らいでリャドは日本で初の個展を開催し(京都、名古屋、東京)、さらにはシルクスクリーンを発表した。当時新進気鋭のプロバは名古屋にも支店があり、知人が関係者であったことから個展への招待状が届いた。どんな画家か前知識もなくヒルトンホテルに出かけた私と妻は、初めて見るリャドの原画に圧倒され言葉を失った。躍動する油絵の具、鏡のような湖水に浮かぶ睡蓮、夜明けの光と影の凄まじい存在感、現実よりももっとリアルな風景画に。それは会場の入り口に置かれたリャドの代表作、おそらくは「カネットの夜明け」であったと思う。その他にも会場には多くの原画と、新発表の何枚かのシルクスクリーンが展示即売されていた。背が高く端正な顔立ちのリャド本人も見かけた。当時は数百万円の原画を買う力はなく、かといって原画を見た後では安くてもシルクスクリーンに食指は伸びなかった。

それから3年、1993年10月リャド急逝のニュースが流れた。また一人世界は天才を失ったのだと落胆していた1994年、手の届くシルクスクリーン作品に出会った。リャド本人のサインがある作品としては最後の版画「ロルカの詩II (DX)」。額ではなくアクリルの箱に装填された作品は、紙の歪みをそのままにした見せ方で、油絵ほどではないが版画にしては驚くほどの立体感、奥行きがあった。リャド独特の構図と言える窓から覗くような風景画が中央に描かれているが、リャド作品としては風景は小さい方で、むしろ絵の中のもう一つの額に相当する周辺部分が目立つ。周辺部分はリャドお得意の色とも言える深い青紫色で塗りつぶされ、そこにロルカの詩が彫り込まれている。ロルカは奇遇にも私が詩集を買った数少ないスペインの詩人であり親近感を覚えた。青紫色にはいつまでも見ていたくなるような魅力があり、その構図には迫力があった。一目惚れのような状態で、何とか買える金額でもあり購入を決めた。

それからもう16年も経つが、この絵は当時から変わらずリビングの一等席に陣取っている。今でもこの青紫色には吸い込まれるようで、その魅力は全く衰えない。またこのアクリル製の額装の丈夫さにも驚かされる。現在この版画の定価は購入当時の2倍になっている。しかし安く買えるルートはあり、売却価格に至っては驚くほど安いはずだ。版画という物にはそもそもほとんど資産価値はない。しかし私には16年もの長い間楽しませて貰い、きっとこれからも楽しませて貰えるだろうこの絵は、充分に元を取って余りある物なのだ。

右下に書かれたJ Torrents Lladóの署名。立体感のあるアクリル箱の額。紙の歪みをそのままで装丁され奥行きがある。
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中央の風景画を囲む窓のように深い青紫色で塗りつぶし、そこには私も好きな詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩が彫り込まれている。
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ルシーア・マルティーネス
赤い絹の暗がりよ
お前の腿は 日暮れのように
光から闇へと移る
ひそみかくれた黒玉が
お前の木蓮の花を暗くする
わたしはここだよ、ルシーア・マルティーネス
わたしは来たのだ
お前の口をむさぼるために
そして 貝殻の黎明の中を
髪をつかんで お前を引きずっていくために
わたしがそうしたいから、そうすることができるから
赤い絹の暗がりよ



価 格:130万円(1994年)
満足度:星5

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