Welcome to my blog

放蕩記

Article page

山荘 無量塔・旅行記

DSC_0303.jpg

布院には御三家と呼ばれる宿がある。「亀の井別荘」「玉の湯」そして「山荘 無量塔(むらた)」。甲乙付けがたい最高級旅館として比較され続けている三つの宿。亀の井と玉の湯が観光客で溢れた湯布院町の中心に位置するのに対して、無量塔は人里離れた山の中にあり、静けさに包まれている。この場所を選択したところからも創業者で2010年8月に亡くなった藤林晃司氏の優れた美的感覚がうかがえる。無量塔はハード、ソフト共に私が過去に宿泊した施設の中では、(俵屋やアマンキラなどに並ぶ)最高の所に位置するものであった。

事前に迎えのリクエストしてあった通り、由布院駅で待機していたタクシーで7分ほどの道程(因みにこの後、チェックアウト後さえも街までのタクシー利用では宿が料金を持ってくれた)。支配人他数名が宿の前でお出迎え。チェックインは3時だが到着したのが1時なので、準備が出来次第早めに案内してもらえるとのことで、それまでは宿自慢の「Tan's Bar」でサービスされるコーヒーとお菓子を楽しむとしよう。

DSC_0454.jpg

Tan's Barを「単に雰囲気の良いカフェ」ではなく一種独特のものにしているのは、店の中央に鎮座する異形の巨大なスピーカーであることは間違いない。1930年代に彼のカーネギーホールで使用されていたヴィンテージ・オーディオ「WE16Aホーン」だ。日本に輸入された5台の内の1台に、漆塗りのようにも見える赤い塗装を施し、全て鉄製のこの機械の内側にフェルトを貼り、真空管アンプと特注のウーファーなどを接続したシステム。何という懲りよう。これでLPレコードのジャズを流せば、深淵かつ軟らかな包容力のある音が響く。

DSC_0265.jpg

センスの良いヴィンテージものの家具や照明で装飾されている店内。天井は高く、太い梁が貫く。
DSC_0257.jpg

ひときわ目を惹く、ヴィンテージ・スピーカー「WE16Aホーン」。
DSC_0271.jpg

ウェルカム・スイーツはムラタ特製のフルーツゼリー。
DSC_0273.jpg

無量塔は全12室、12通りの部屋。すべて離れの棟で、大浴場はなく、源泉掛け流しの温泉は客室風呂となっている。1泊目は「汲」、2泊目は「暁」と名付けられた部屋を予約してある(お盆休み期間なので予約開始直後に電話して押さえた)。この2つの部屋は2004年に新築されたもので、創業者と親交のあった「Simplisity」の緒方慎一郎というデザイナーの作。インテリアだけでなく、無量塔で使用される食器もシンプリシティ製のものは多い。緒方さんは相当な方のようで、最近ではアンダーズ東京も手がけている。

DSC_0323.jpg

「汲」は91㎡。都会の高級ホテルと比べるのは反則だろうが、それにしてもこの広さ。それでも無量塔では広い方ではない。また庭から裏山への緑の広がりでさらに広く感じられる。室内は段差が多く、和洋折衷という言葉では片付けられないエキセントリックな造り。一例を挙げれば、昼寝スペースの和室の中央の畳が電動でせり上がり、掘りごたつ式の机に変身する。和室の下には冷蔵庫がありビールやジュースが用意されているが、これで料金を取ろうなどという姑息な考えは無量塔には存在しない(つまり無料だ、無量だけに…)。

昼寝スペースの和室。
DSC_0295.jpg

中央部分の畳が電動でせり上がり掘りごたつ式のテーブルに早変わり。
DSC_0363.jpg

リビングに置かれたヴィンテージ・ソファは中目黒のHIKEというヴィンテージ家具店から仕入れたものだとのこと。その革を貼り替えている。また一人掛けの椅子は「ポール・ケアホルムのPK20」という100万円はするであろう名品。

DSC_0294.jpg

庭に設えられた池に金魚が2匹住んでおり、可愛い。寝室の窓には裏山の緑が溢れる。左右対称で石作りの洗面台は、アマンをデザインしたエド・タートルやフランク・ロイド・ライトを思わせるような造り。洗面バスアメニティはMarks & Web。左右のシンクの向こうに半露天の浴室が見える。

DSC_0282.jpg

DSC_0285.jpg

DSC_0286.jpg

DSC_0287.jpg

DSC_0552.jpg

前室にシャワールームを備える、源泉掛け流しの浴室は広い。浴槽には優に4−5人は浸かれるだろう。引き戸を全開にすれば庭の緑が溢れて露天風呂となる。不思議と虫が少ない。かすかに硫黄臭が感じられるが、ほぼ無臭の単純温泉。

DSC_0290.jpg

DSC_0288.jpg

DSC_0341.jpg

玄関には下駄とレインブーツが用意されている。
DSC_0430.jpg

夜間、テラスからリビングを見た景色。
DSC_0356.jpg

「汲」と「暁」では夕食は部屋食で、朝食は食事処の個室で用意される。
DSC_0367.jpg DSC_0368.jpg

ドリンクメニューも豊富。グラスシャンパンはPM champagne。もちろん冷蔵庫の中の無料のビールを開けるも良し。
DSC_0373.jpg DSC_0376.jpg

DSC_0382.jpg DSC_0383.jpg

DSC_0384.jpg DSC_0385.jpg

土鍋で炊いたご飯が美味い。この土鍋は館内のショップで土産で購入した。二合羽釜15,120円。
DSC_0387.jpg DSC_0389.jpg

豊後牛(ぶんご=現在の大分県)の炭焼き。
DSC_0390.jpg DSC_0391.jpg

デザートのマンゴーアイスとケーキは場所を変えてTan's Barで頂くことにした。夕食で余ったご飯はおにぎりにしてくれて、夜食として持って来てくれた。数時間経つとお腹って空いてくるもので、これがまた美味いのだ。
DSC_0399.jpg DSC_0401.jpg

朝食は1泊目は洋食、2泊目は和食を選択した。食事処の「紫扉洞」にて。ここは200年前の新潟の屋敷を移転改築したものだそうだ。部屋毎に意匠が異なる。
DSC_0426.jpg DSC_0405.jpg

今朝摘みたての葡萄を搾ったジュースが新鮮美味。
DSC_0407.jpg DSC_0408.jpg

DSC_0409.jpg DSC_0411.jpg

DSC_0418.jpg DSC_0423.jpg

「暁」の部屋は87㎡。体感的には「汲」とほぼ同じ大きさ。「汲」とは隣り合わせで、汲の浴室の石の壁が、暁のリビングの壁となる(もちろん隣の音は全く聞こえない)。こちらも都会的センスに溢れた造りとなっている。リビングのヴィンテージソファの出所をフロントに尋ねたが分からなかったため、ソファの中にあったマークを元に自宅に戻って調べたところ稀少品の「ペーターヴィッツ&オラ・モルガード・ニールセン(Frans&Son)」だと判明した。

DSC_0433.jpg

玄関からリビングが直接見えない汲に対して、暁は玄関から直結している。私は汲の間取りの方が好きだが、リビングの開放感は暁が勝る。庭に向けた窓が広々としている。廊下を進むと寝室と洗面室、そしてシャワールームから半露天の浴室へと続く。

DSC_0436.jpg

リビングから玄関方向を見る。
DSC_0435.jpg

庭に向かって壁一面のリビングの窓。
DSC_0449.jpg

廊下を進むと洗面所がある。汲と同じデザインのダブルシンクだが配置が異なる。
DSC_0440.jpg

汲の寝室は広い窓に囲まれているが、暁はやや閉鎖的。しかし廊下側の襖を開けると庭の景色が広がる。
DSC_0441.jpg

ベッドは寝心地がよく、枕はムラタ特製のもので高さが低めでとても良い(売店で2万円ほどで購入できる)。
DSC_0486.jpg

浴室は汲よりも狭い。しかし汲の浴槽が石製で長方形なのに対して、暁の浴槽は床は石だが周りはおそらく木製で丸い。そのため肌への当たりが柔らかく、寛げる感じは暁が勝る。こちらも扉を開け放てば緑溢れる露天風呂になる。

DSC_0446.jpg

DSC_0443.jpg

DSC_0502.jpg

DSC_0573.jpg

昨日と同じ担当の女中さんが夕食の準備を始める。
[広告] VPS


DSC_0518.jpg DSC_0516.jpg

DSC_0519.jpg DSC_0523.jpg

DSC_0524.jpg DSC_0528.jpg

DSC_0529.jpg DSC_0531.jpg

DSC_0532.jpg DSC_0534.jpg

DSC_0536.jpg DSC_0535.jpg

Tan's Barは夜6時以降は宿泊客専用となり低料金でお酒が飲める。例えばカクテル500円、シャンパン700円など。「アラウンド・ザ・ワールド」を注文した。
DSC_0538.jpg DSC_0541.jpg

朝食は「紫扉洞」の1拍目とは別の部屋。明治の邸宅のよう。照明器具もアンティーク。
DSC_0553.jpg

DSC_0554.jpg

DSC_0555.jpg

DSC_0557.jpg

DSC_0558.jpg DSC_0560.jpg

DSC_0561.jpg DSC_0562.jpg

DSC_0565.jpg DSC_0566.jpg

DSC_0567.jpg DSC_0568.jpg

DSC_0569.jpg DSC_0570.jpg

また無量塔が湯布院の街中で経営するケーキショップ「B-Speak」の名物、午前中に売り切れ必至のロールケーキ「Pロール」などのスイーツが、連泊者にはサービスされる。チョコとプレーン。甘さ控えめで軽くて食べやすい。
DSC_0477.jpg

また敷地内には手打ち蕎麦処「不生庵」がある。
DSC_0309.jpg

茶豆のような味を感じる味わい深い蕎麦であった。ざる蕎麦と更科そば、800円。
DSC_0314.jpg

旅館が敷地内に美術館を持っているというのはとても贅沢で、美術館好きの私にはたまらない。しかもそれがセンスのいい建物で、現代美術を中心にしたコレクションならなおさらだ。「artegio」は音楽をテーマにした絵画と彫刻が展示されている。宿泊客は無料。
DSC_0455.jpg

DSC_0458.jpg

DSC_0459.jpg

DSC_0460.jpg

DSC_0466.jpg

チョコレート工場と即売店「theo murata」では、チョコレートと器をお土産に購入した。
DSC_0464.jpg

DSC_0702.jpg

談話室とお土産屋。談話室のコーヒーやお茶はセルフサービス。
DSC_0571.jpg

DSC_0545.jpg

DSC_0548.jpg

DSC_0542.jpg

羽釜の他、シンプリシティ製の茶碗などを購入した。
DSC_0708.jpg

最後に従業員の対応について書いておこう。12室しかないので可能なのであろうが、ある従業員に話した内容が、他の従業員にも伝わっており情報が共有されている。初めて顔を合わせた従業員でも私たちの顔と名前を把握しており、どこから来た客で、明日の行動予定は何であるかなどを分かっている。こういった対応はアマンキラでも経験しているものだ。また客室担当など多くの従業員はまだ若く、未熟なところがあるが、一生懸命さが感じられるので好感が持てる。

Category - 山荘 無量塔・湯布院

2 Comments

BP  

No title

今回もとても読みごたえがありました。
ビンテージスピーカーからの音楽の流れる
バー、良さそうですね。
石積みの壁というのもすごくいいですね。

無量だけに、がちょっと衝撃でした笑

2015/08/22 (Sat) 17:05 | EDIT | REPLY |   

Dr.Takabo  

Re: No title

BPさんコメントありがとうございました。
長い文章を読んで下さったようでありがとうございました。
センスの良いBPさんも、きっとお気に召す宿だろうと思います。

2015/08/22 (Sat) 22:05 | REPLY |   

Post a comment