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放蕩記

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ベネッセハウス・宿泊記

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(安藤忠雄とジェームス・タレルの共同作品「南寺」入り口)

もそも日本人は建築家を尊敬しているだろうか? かく言う私も数年前までは建築家を意識したことはない。例えばガウディなら知っていた。しかし我々がガウディに対するのと同じぐらいの憧れを欧米人が安藤忠雄に抱いているとは知らなかった。安藤忠雄が海外で講演すると、まるで宮崎駿が講演したかのように熱狂的な聴衆によってサイン攻めにあうそうだ。また例えば東南アジア諸国で最も有名な日本人が丹下健三だということも数年前には知らなかった。911テロのワールドトレードセンタービルを設計したのが日系のミノル・ヤマサキであることや、ニューヨーク近代美術館MoMAが谷口吉生の作であることも一般には関心の無いことだ。つい先日、磯崎新がエジプトの大学コンペで最優秀に選ばれたことも新聞の片隅にしか載っていなかったぐらいマスコミも興味がない。

 しかしどんなに日本人が無頓着であろうとも、日本人の建築家は海外では多大な尊敬を集めている。その中の代表格であるのがスーパースター安藤忠雄。我々は彼と同時代に生きていることを幸せに思わなければならない。その安藤がベネッセの福武總一郎という財力の求めに応じて、瀬戸内海の小島にホテルや美術館を建てた。その島こそ世界に誇るアートの楽園、直島だ。世界の著名な芸術家達が、安藤と共に仕事ができるならと喜んで参加する。そして日本人がガウディ建築を見るためにバルセロナに旅するように、欧米人は安藤建築を見るために直島を訪れる。我々はそんな直島が日本にあることを幸せに思わなければならないのかもしれない。

 直島には宇野港からフェリーで行く。片道280円の海の旅だ。

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 甲板に出れば気持ちの良い瀬戸内海の景色が臨める。たった20分で到着してしまうのがもったいないほど。

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 フェリーを下りるとそこにはすでにベネッセハウス宿泊者用のバスが待機している。このバスは島内を巡回しており、主要な箇所に停車し、宿泊者は無料で利用できる。

 直島は岡山と香川の間、瀬戸内海に浮かぶ人口3400人の過疎の島。黒い焼杉板の古い民家が印象的。ベネッセ会長の福武總一郎はこの島に美しい自然と、現代美術と、過疎の村の人間を一体化するプロジェクトを立ち上げた。1992年、ベネッセハウスのミュージアム棟の完成をかわきりに、民家を現代美術作品に造り替える「家プロジェクト」、さらに「地中美術館」とこの島を世界的なアートのメッカに発展させた。

 ベネッセハウスは現在、ミュージアム棟、ミュージアム棟からモノレールでつながったオーバル棟、海岸にあるパーク棟とビーチ棟の4棟からなる。もちろん安藤忠雄の作品だ。すべての棟の部屋を合わせても65室しかないため予約が取りにくく、ネットで数ヶ月前から予約を受け付けている。この中でやはり最も特異でベネッセハウスらしい施設は美術館の中にホテルがあるミュージアム棟だろう。今年の12月からはどの棟の客もまずは一番部屋数の多いパーク棟でチェックインすることになったためここでバスを降りた。

 レセプションにはトーマス・ルフらしいぼやけた写真作品が飾られ、壁のコンクリートには1枚ガラスの入った数メートルのスリットが入り、いきなりの安藤建築の洗礼が心地良い。このスリットを入れるのに一体どれほどの技術とお金がかかるのだろうと杉本博司も書いている。

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 パーク棟内にも作品が展示されており見どころが多い。特にレセプションを降りた場所に展示されている杉本博司の光の棺とその周りを囲む「ワールドトレードセンター」「光の教会」「松林図」などのモノクロ写真作品は平和と鎮魂の気持ちを呼び覚ます静謐な空間を作っており必見。 またパーク棟にはラウンジがありコーヒー紅茶が、夕方にはワインも無料で提供される。 そしていたるところで迷路のような安藤建築らしさに出会える。

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 パーク棟に荷物を預けてから、直島の本村という集落の古い民家を現代美術作品として再生することから始まった作品群「家プロジェクト」を探訪する。家プロジェクトを堪能し宿泊者用バスでミュージアム棟にもどる。車窓からは瀬戸内の美しい海が広がる。記念写真名所でもある草間弥生の黄色い南瓜が見えてくるとベネッセハウスはもうすぐだ。

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 ミュージアム棟はベネッセハウスの一番最初にできた棟であり顔である。ここは一般観覧のできる美術館であり10室を有するホテルでもある。文字通りの美術館の中のホテルは前代未聞であり世界でも例がない。

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 美術館を抜けてピカピカに磨かれた安藤コンクリートの壁を愛でながら部屋に向かう。

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 今回取ったのはデラックスツイン。安藤コンクリートと木のフローリングでシンプルに作られた部屋。大きな窓とベランダのある部屋からは瀬戸内の美しい海が一望。その景色はバスルームからも見ることができる。各部屋にはそれぞれ異なる作家の美術作品が飾られているが、この部屋にはトーマスルフの写真「星雲」が飾られていた。バスルームは一転レトロな雰囲気。昭和のお風呂はこんな感じだった、みたいな洗い場とタイル。3年前に来たときはアメニティがモルトンブラウンだったが今回はTHANNに変わっていた。

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 ミュージアムのカフェでウエルカムドリンクのシャンパンやジュースを飲みながら夕陽が落ちるのを眺める。

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 5時からはスタッフによる作品のガイドツアーがある。本日のガイドは支配人の菊田さん。にこにこしてとても感じの良い方。ミュージアムの主要な作品を解説して廻る。中庭に並べられた杉本博司の海の水平線を映した写真作品群の前では、世界平和というコンセプトを直感し、思わず熱いものが込み上げてきた。またこのミュージアムには最重要作品がブルースナウマンの「ワンハンドレッド・リブ・アンド・ダイ」であることは疑う余地がない。そもそもこの作品を展示することがベネッセハウスを作るきっかけになったそうだ。かの「モナ・リザ」などと並んで、来世紀に残したい美術作品の一つに選ばれたらしい。ブルース・ナウマンは2004年に世界文化賞に選ばれたことも記憶に新しい。宿泊者には一般観覧者が居なくなってからも夜10時までこれらの作品を独占する特権が与えられている。

 その夜は日本料理レストラン「一扇」で懐石を頂いた。一扇にはバスキアの絵が飾られている。5400円から11000円までのコースがあるが5800円で充分満足が得られる。どの料理もとても美味しい。店主は清水明一。一扇は岡山市の料亭のようだ。部屋に帰ると、一扇からの夜食のプレゼントが置かれていた。

 翌朝。部屋の窓からの景色。

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 部屋を出ればそこは美術館の中。

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 ミュージアム棟からは宿泊者専用の扉を抜けてケーブルカー乗り場へ行くことができる。このケーブルカーに乗りのんびりとした風情ある5分の旅でもう一つのオーバル棟に行くことができる。

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オーバル棟はその名の通り楕円形の池の周りに部屋がある。

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 棟の上からは360度の瀬戸内の絶景で、恐いほどに空と海が広がる。自然と美術の融合。ベネッセミュージアムはそのコンセプトを見事に結実する。

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価 格:ベネッセハウス・ミュージアム棟 デラックスツイン(大人2名)約4万2千円 x2泊
満足度:星5

Category - ベネッセハウス・直島

2 Comments

BP  

No title

直島、とてもステキなところですね。
今まで日本であまり強く行きたい!と思うところが
なかったのですが、こちらの記事で拝見して
直島にすごく行ってみたくなりました。

写真も文章もいいですね。
旅に出たくなります。

2014/02/25 (Tue) 18:39 | EDIT | REPLY |   

Dr.Takabo  

Re: No title

BPさんこんにちは。
直島へのコメントありがとうございました。
そのように言って頂けると、ブログを書く甲斐があります。
今後ともよろしくお願いします。
私は本当に直島が好きなのです。
昨年は安藤忠雄さん本人ともお会いできましたし、隣の豊島にも行き、そこでも新たな感動がありました。

2014/02/25 (Tue) 18:53 | REPLY |   

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