Welcome to my blog

放蕩記

Article page

メトロポリタン・オペラ / 日本公演2011 / ラ・ボエーム

Category - 
laboheme.jpg

トロポリタン歌劇場は米国ニューヨークのリンカーン・センター内にある世界的に著名な、米国随一の歌劇場。キャストや装置の豪華さで名高い。しばしば「メト」(MET)とよばれる(Wikipediaより)。

2010年10月の新聞広告でMet日本公演を目にしました。2011年6月に名古屋と東京で催されるとのこと。演目の一つ「ラ・ボエーム」には憧れのアンナ・ネトレプコが主役とのこと。
netrebko.jpg
知ってしまったからにはいてもたってもいられない。しかし高額なチケット代などに悩んでいるうちに出遅れてしまい、ぎりぎり、3階バルコニー席でしたが、S席をゲットできたという次第です。こうして長い間、心待ちにしていたのですが、まさかこのタイミングでわが国をあのような悲劇が襲うとは……。

3.11からしばらくしてふと思う。METは来日できるのか? 日本国内でも大騒動ですが、海外の報道はさらに悲惨なもので、外国人の日本脱出は後を絶たず、世界中から哀悼の意を表されているのはご存じの通り。私もむしろ来ない方が世のためではないかとさえ思いました。世界の宝であるMETが日本で被災でもしたら申し訳ないと。案の定、METの内部でも来日すべきかどうか大問題になっていたそうです。4月頃には検討中とのアナウンスがありやはりだめかと思っていたところ、5月になり、名物指揮者のレヴァインが病気のため主席客員指揮者のファビオ・ルイジに替わるほか数人のキャンセルがありましたが、大きな変更はなく来日できるとの正式なアナウンスがありひとまず安心していました。しかし公演まであと1週間となった直前に、なななんと、ネトレプコがドタキャン!

そもそもネトレプコを見たいがために買ったチケットでした。ネトレプコは「ラ・ボエーム」の主役。もう一つの演目の「ドン・カルロ」の主役のバルバラ・フリットリ
barbara.jpg
も世界最高のソプラノですが、彼女が急遽ネトレプコの代役となり、フリットリの代役としては、ヨーロッパでコンサート中のマリーナ・ポプラフスカヤがコンサートをキャンセルして招聘されるとのこと。テノールの主役カレーヤもドタキャンをしたのでそちらの代役も招聘されました。MET総裁は記者会見で、かなり苦労したと語りましたが、結局招聘できちゃうところがさすがMETなのでしょう。

ともかく、どんなにフリットリが素晴らしくても、我々はネトレプコを見たいがためにチケットを買ったわけだから残念でしかたがない。しかし2枚看板のもう一人が代役をつとめてくれるので、まだマシかもしれません。納得できないのはフリットリ見たさに「ドン・カルロ」を買った人たちでしょう。フリットリは来日してるのに「ラ・ボエーム」に取られてしまう形になるのですから。

ピーター・ゲルブMET総裁は弁の立つ人です。
Gelb.jpg
ネトレプコがキャンセルしたことなどを発表するための5月30日夜の緊急記者会見は説得力のあるものでした。その模様はUstreamで見ることができます。その会見で私の興味を惹いたのは以下のような発言でした。

1)アメリカなどでは今でも日本の原発事故による惨状が報道がされている。オペラの芸術家というものはそのようなことに対して必ずしも精神的に安定した人ではないので、それらを目にした団員達が混乱するのはやむを得ない。
2) しかしMETは来日できるかどうかについて、コロンビア大学の専門家を招くなどして検討を重ね、最終的に安全性を確信し、団員達に説明をした。来日した団員達は、それぞれが日本が安全であると確信し、強い志を持っている。
3)METは今年来日する世界的な芸術カンパニーの最初のものであって、これから来日を検討している人たちの指標となるだろう。
4)しかしネトレプコは我々が飛行機に乗り込む時にキャンセルをした。そのことで彼女と長時間にわたり話し合った。彼女はチェルノブイリの時にロシアに住んでおり、彼女の親類や友達が被曝しガンになった。日本が安全だと分かっていても、そのことがどうしても頭を離れず、足がすくんで飛行機に乗れなかった。もし無理矢理来日してもベストな状態で歌うことをできないだろう。直前のキャンセルになったのはネトレプコが来日するつもりであり悩んでいた結果だろう。

その会見を聞いて、私はネトレプコを責める気になれませんでした。彼女の公式ホームページには次のようなメッセージが掲載されています。

A statement from Anna Netrebko regarding Japan
Published: 31 May 2011
Dear friends,
It is with a heavy heart that I inform you that I will not be joining the Met on its current tour to Japan. This was an incredibly difficult decision for me; it was made on a very personal level with a great deal of pain and conflicting emotions. My family and friends have suffered in many ways for years from the effects of radiation from Chernobyl. While I make no comparisons now between Japan and Chernobyl, I made a deeply personal and difficult choice not to join the Met on this tour based on my past experiences. I want to take this opportunity to express my sympathy for the Japanese people and the crisis they are facing. Their strength is an inspiration to me, and I am very sorry to disappoint them. I look forward to returning to Japan to perform in the future.
Sincerely,
Anna Netrebko


さらにバルバラ・フリットリの公式ホームページには次のようなメッセージが掲載されています。ちなみに、ホームページの日本公演案内の写真ではフリットリは日本国旗を抱きしめて下さっています。

日本の皆様へ
普段、ウェブサイトから直接メッセージを皆様にお届けすることはしないのですが、今回のMET日本公演の現状については、私自身からご説明するべきと考えました。皆様の素晴らしい国が、このような悲劇に見舞われたことに私も大変ショックを受け、心を痛めております。私自身は、このような時だからこそ、日本に行って歌うことが私の皆様への心からの親愛の情を表す唯一の手立てであると考え、ツアーへの参加を迷うことは一度もありませんでした。今回、複数の出演者の急なキャンセルによって、配役の変更が余儀なくされました。私はメトロポリタン歌劇場側からの要求により、選択の余地も与えられず、急遽エリザベッタではなく、ミミを演じることになりました。私のエリザベッタを楽しみにして下さっていたお客様には大変申し訳なく存じます。ここ数日の間に起きた思わぬ状況を皆様にご理解いただけることを願うばかりです。演じる役が変わりましても、私は、私の歌を聴いて下さる方々に、たとえ数時間でも、愉しく、晴々とした気持ちになっていただけるように、精一杯舞台を務めて参ります。私の心と歌は皆様と共にあり、私は皆様のために歌います。震災後の日本の状況を私に知らせ続けてくれた友人のノリコとミサに対し、ここに感謝の意を表します。
日本の皆様への心からの親愛の情を込めて
バルバラ Barbara


そうして我々は一応の納得の元に、6月4日を迎えました。愛知県芸術劇場大ホールのラボエームは今回の日本公演の初日です。めかし込むのに時間がかかり、2時15分の開場(開演は3時)をやや遅れて我々の車は到着。しかし多くの高級車やタクシーで周辺は混雑、芸術劇場の巨大な駐車場は満車です。しまった! しかし大丈夫。隣のNHKホールの駐車場がありました。

会場の入り口では入場者全員に、次のようなメッセージが入ったプログラムが配られました。

お客様各位
 本日はメトロポリタン・オペラ名古屋公演にお越し頂きまして、誠にありがとうございます。未曾有の震災を経て多くのクラシック関係の団体が来日公演を中止する中、ピーター・ゲルブ総裁はじめ総勢400名の歌劇団が公演実施をご決断いただいたことに主催者として感謝を申し上げます。
 世界最高峰のオペラ・ハウスの5年ぶりとなる来日公演となりますが、震災の影響は避けがたく、当初予定していた歌手が来日できなくなってしまったことに対しては深く遺憾に存じます。
 しかしながら、本日皆様に舞台をお送りするキャストは、最高のクオリティーの総合芸術を提供し続けるメトロポリタン・オペラが自信を持って決定した世界屈指の歌手達です。21世紀のオペラ界を担うスター達の豪華競演に是非ご期待下さい。
 ささやかな気持ちではございますが、今回の公演におきましてはすべてのお客様にプログラムを謹呈させていただくことにいたしました。本日のご観劇の一助となりますことを希望いたします。では世界最高峰のオペラをごゆっくりとお楽しみ下さいませ。
中京テレビ放送 中京テレビ事業 ジャパン・アーツ


誰かがどこかのネットで「ジャパン・アーツがプログラムを無料で配ってくれるぐらいのことをしてくれないと気が収まらない」と発言していましたが、これでその人の気は収まったかもしれませんね。

さて、愛知県芸術劇場大ホールには、オペラ鑑賞にはつきものの、シャンパンやワインやコーヒーの飲めるブースが設けられていて、そこはこの建物の10Fに出店しているウルフギャングパック・カフェがやっているのですが、安もののワインは許せるとして、500円のアイスコーヒーを客の前でブレンディのペットボトルから注ぐのだけはやめていただきたい。雰囲気ぶちこわしです。

ここで、プッチーニ作「ラ・ボエーム」のあらすじを書いておきます。

華の都パリ。ボヘミアンと呼ばれる芸術家の卵達、詩人のロドルフォ、画家マルチェッロ、音楽家ショナールと哲学者コリーネは男4人、貧しくも意気揚々と暮らしていた。あるクリスマスの夜、詩人ロドルフォはお針子のミミに出会い、あっという間に恋に落ちた。仲間で街へ繰り出せば、画家マルチェッロも一度は振られた華やかな娘ムゼッタと再び結ばれ、皆で楽しく大騒ぎ。しかしロドルフォとミミの楽しい時間は短かった。病に冒されたミミの回復のため、より良い暮らしをさせようと、心変わりをしたふりをするロドルフォ。降りしきる雪の中、2人は心の中で互いを思いやりながらも、悲しい別れを決断した。しかし最期の時、ミミは愛する人の腕の中へ戻って行くのだった。プッチーニの切なく揺れる旋律に、心ゆくまで酔える作品。


上演時間は3時間(第一幕40分、転換5分、第二幕20分、休憩25分、第三幕25分、休憩25分、第四幕30分)。上演前にピーター・ゲルブ総裁が登場し、日本の復興への願いと今回の主役交代の謝罪を語ってくれたのには心動かされました。

オペラは、オーケストラの生演奏、マイクを使わない歌手達の肉声、大がかりな舞台装置による総合芸術です。充分に楽しませていただきました。フリットリの声はさすがに迫力がありました。ただ、S席と言っても3階のボックス席。オペラグラスを使用しないと顔がはっきりと分からない距離です(その距離でも声が減衰せずに届くのが凄いところですが)。できれば1階か2階の席で楽しみたかったです。カーテンコールは何度もあり、拍手が鳴り止みませんでした。でもやっぱり、お目当てのネトレプコにスタンディングしてブラバと叫びたかった私です。

価格:S席 ¥64,000 x2枚
 

Category - 

2 Comments

451f  

ふと思う事。

FC2ブログにも、イイネ! ボタンがあれば良いのにと思います。
賛同できるけれどうまいことコメントが思いつかないときってよくあります。

2011/06/06 (Mon) 00:03 | EDIT | REPLY |   

Dr.Takabo  

Re: ふと思う事。

>451fさん
いつもありがとうございます。

2011/06/06 (Mon) 00:22 | REPLY |   

Post a comment