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放蕩記

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小川待子展「生まれたての うつわ」/ 豊田市美術館

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田市美術館は私の最も好きな美術館であるだけでなく、私が思う最も美しい建築作品でもある。日本の誇る世界的建築家の一人、谷口吉生によるこの美しい建物は、彼の代表作の一つであり世界的にも高く評価されている。そもそも芸術作品を展示する目的を持つ美術館たるもの、それ自身が優れた芸術であることが必然とされ、そういった使命を持つ建物であるからこそ、フランク・ロイド・ライトによるNYのグッゲンハイム美術館、レンゾ・ピアノによるパリのポンピドゥーセンター、安藤忠雄による直島の地中美術館など、世界中に美しい美術館が存在するのであり、建築物の最高峰として存在する美術館も少なくない。世界の美の系譜に連なるそんな美術館の一つが名古屋の隣の豊田市に存在することは地元ですらあまり知られていない。それは嬉しくもあり悲しくもあることである。混雑しないのは嬉しいことで、近隣に世界に誇れるものがあると多くの人が知らないことは悲しくもある。

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この10月の素晴らしい気候の中、私は必ずここを訪れようと思っていた。これは本日の豊田市美術館の写真である。実に美しいではないか。米国産のグリーンスレート石をふんだんに使用した外壁はまるで古代の城壁の門の現代的解釈のように見える。建物本体を覆うのは乳白色のガラスでこれらの対比は巨大なミニマルアートと言えよう。しかしこの近未来的な外観が決して冷たく無機的な印象を与えないのは建物の前に広がる大きな池、その水の力であることは明らかだ。さらにその周りを覆う、豊田市の中心部にあるとは思えない緑の力である。

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しかし豊田市美術館の宣伝ではなく、本日鑑賞した展覧会の紹介が本日のブログのテーマであるので話を次に進めよう。小川待子。浅学の私はこの作家を知らないのでちらしの紹介文を引用しよう。

小川待子は1946年、札幌に生まれ、東京芸術大学工芸科を卒業後、パリでの留学時に鉱物の美しさに衝撃を受け「かたちはすでに在る」という、素材から立ち上げる原型的な考えに結びつきます。そしてその後の西アフリカでの制作の経験は、他の日本の作家とは異なる独自のスタンスでの陶芸制作にとって決定的なものとなりました。
人が何かをすくい取り、水などをたたえておくもの、そして大地から生成し大地に帰ってゆく存在。その<うつわ>は収縮と拡散のぎりぎりの均衡のなかで、あえて亀裂を見せながらも、その内部に透明な釉薬を輝かせています。その中に包まれ、隠し、たたえる場は、華美で洗練されたこの国の「伝統的な」工芸を超えて、造型としての原型体をわれわれに示しています。
その造型とは、人の作るものの原始的な創生を想起させるとともに、永遠の詩的存在としても見ることが出来ます。


なるほどね。言いたいことがよく分かる解説だ。日本の誇る焼き物の器とは、茶器であったり花器であったり、どんなに優れた作品も、あくまでも人が使用することを目的としてこそ存在意義があるものであり、それが工芸品でありデザインの使命である。しかしたとえば荒野に自然に存在する割れた岩、その中にたまたま雨や湧き水が貯まっていたらそれは器なのではないか。そのようなものを敢えて人が創り出し、自然の中ではなく、人の生活圏に持ち込んだとしたら、それは工芸品やデザイン作品ではなく、アートである。まさに私は、この展覧会で小川待子の作品に対峙してそのようなことを感じた。

私は美術館の中に居ながらにして、グランドキャニオンやデスバレーに存在するかのような割れた岩に出会い、その「生まれたての」、プリミティブな、原始的な「うつわ」にたたえられた、(ガラスで作られている)水に、美しいラグーンや、黄龍、ウユニ塩湖、トルコのパムッカレのようなブルーを見た。

やはり見ると聞くとでは大違いだ。一見地味な陶芸展かと思われたこの展覧会は、まさに雄大な現代美術の力を感じされられるものであった。
 

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2 Comments

BP  

美術館

たびたびお邪魔してすみません。

昨年までこの美術館のすぐ近くに住んでました。
おっしゃるように、僕も住み始めてから
何年も美術館の存在に気付いていませんでした。
地元でもあまり知られてないように思います。

この建築、圧倒的なスケールの大きさ、水盤や庭、
すごくいいですよね。

入館しなくても利用できるレストランも
気に入ってました。

日本でも建築がもっと評価されるようになると
いいなあと思ってます。

2014/02/26 (Wed) 19:26 | EDIT | REPLY |   

Dr.Takabo  

Re: 美術館

BPさんはこの美術館の近くにお住まいだったのですね。
良い環境にいらっしゃいましたね。
私はときどき無性にこの美術館を見たくなるのです。
とても心が安らぐというか、まるで偉大な絵画を見るような気分になります。
いつもコメントありがとうございます。

2014/02/26 (Wed) 20:10 | REPLY |   

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